J-PPMI パーキンソン病発症予防のための
運動症状発症前biomarderの特定研究

J-PPMI ;The Japan Parkinson's Progression Markers Initiative

J-PPMIとは

ご挨拶

髙橋祐二(国立精神・神経医療研究センター)
国立精神・神経医療研究センター

髙橋祐二

J-PPMI(パーキンソン病発症予防のための運動症状発症前バイオマーカーの特定研究)は、国立精神・神経医療研究センターの故村田美穂院長が2014年に始められた多施設共同研究です。2018年から引き継ぎこの研究の代表者をしております国立精神・神経医療研究センターの髙橋祐二と申します。

パーキンソン病という病気をご存知でしょうか。脳の黒質という部分の神経細胞(ドパミン細胞)が障害され、手が震えたり動きがゆっくりになったり、歩きにくくなったりする病気です。パーキンソン病は年齢とともに発病率が上がり、日本では70歳以上では1%(つまり100人に1人)の患者さんがいるといわれ、欧米では65歳以上で1%といわれており、今後も人口の高齢化に伴い、増加の一途をたどると考えられており、決して珍しい病気ではありません。最近は多くの薬剤により症状はかなり改善されています。しかし、完全に治ってしまってもう薬はいらないという治療はまだありません。

私たちはこの細胞の障害をなおす治療を目指していますが、一つ大きな問題があります。震えや歩きにくいなどパーキンソン病の症状が出た時点ではすでにドパミン細胞は60-70%に減っているために、細胞の障害を遅らせたり、止めたりするためには、もっと早い時期に対応する必要があるのです。そこで、パーキンソン病が発症する前に発症するかもしれない人をどのように探すか、ということが精力的に研究され、そのなかで、REM睡眠行動異常症(RBD)の方は、パーキンソン病やその関連の病気になる確率が他の人よりも高いということがわかってきました。RBDの診断後10年間で80%程度の方がパーキンソン病等の病気になるという報告もあります。 一方で、当然ですが、RBDであっても、パーキンソン病などにならない方もおられます。数年以内にパーキンソン病が発症するかどうか、つまり、ドパミン細胞の障害が始まっているかどうかは、ドパミントランスポータースペクト(DAT SPECT)という画像検査で分かるようになってきました。そこでRBDの方にこのスペクト検査(DAT SPECT)をして、診察や採血などをしながら経過を観察することで、パーキンソン病が発症する直前から、発症してくるときに起こってくる変化や、発症しない人と発症する人の違いを見つけることができる可能性があります。血液などの成分や画像の検査、心理検査などで、パーキンソン病などが発症してくるときの変化を見つけることは、発症させない薬や、発症した人への薬の開発に役立つばかりでなく、現在開発が進んでいる発症を予防する、あるいは遅らせる薬の評価に役立ちます。現在は実験室の中で発症を予防するかもしれないというデータが得られても、実際に患者さんに役に立つかどうかを評価する手段がないために、薬にできないという部分もあるのです。

このようなことから、私たちは、この研究を日本で始めることにしました。実は同様の研究が米国PPMI(Parkinson’s Progressive Markers Initiative)の一部として行われています。病気のなりやすさは民族による違いも大きいとされているので、やはり我が国独自のデータが必要ですし、一方で海外と連携して研究を進めることも重要なので、米国PPMIと相談の上、緩やかな連携を取るということで、日本版PPMIとして、略称J-PPMIを使っています。

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